アクセスありがとうこざいます。山田大地です。
日経電子版より。今日取り上げる記事は、電力供給システムの抱える問題点について言及した記事です。
記事は、環境問題への対策から、脱石油、電力エネルギーへとシフトしている中で、電力エネルギーを供給するシステムが抱える問題点を3点あげ、問題から目を逸らさず、あらゆる対策の手段を検討することこそ、電力を商品として商売するものの責任であると結んでいます。
電力供給システムの抱える問題点とは
①再エネの採用で需給バランスを取るのが難しく、停電のリスクが増している
太陽光発電や風力発電が今のように普及する前は、電力会社や発電事業者が保有する発電所から、工場や一般家庭へと電気を送っていました。
電気は作った電気と使う電気が常に等しくなるようにしないと、停電します。このため電力会社は、常に電気の使用状況を把握して、発電機の運転具合を調整しています。
最近急速に普及が進む太陽光発電や風力発電は、太陽の照り具合や風の吹き具合によって発電電力がころころ変わります。このため、今まで以上に電力会社は神経質に発電機の運転具合を調整しなくてはならなくなりました。つまり、停電するリスクが上がっているのです。
切り札はスマートグリッドとVPPです。スマートグリッドとは、各家庭で使う電気の使用状況をリアルタイムに把握できるシステムのことで、VPPとは点在する太陽光、風力発電などの発電機、そして充電設備を一体的に連動させるように動作させ、一つの大きな発電所のように動作させる技術のことです。
この2つの技術が成熟し浸透すれば、各地域の中で電力エネルギーを融通し合えるようになるため、電力会社の発電所運転調整の負担が軽くなります。結果的に、停電するリスクが下がります。
ただ、これで安心というわけではありません。いづれの技術も、通信が正常に動作して初めて動作します。通信インフラが攻撃されたら、無効化されるのです…
②セキュリティ対策を怠れば、テロの標的となる
通信設備は電力の安定供給に欠かせません。
上で説明したように、スマートグリッドやVPPの実現に不可欠ですが、それだけではないです。
発電所や変電所の遠隔操作、中央の指令所(給電指令という)と各発電所を結ぶ連絡手段としても、通信設備が絶対必要です。そして、その通信設備がダウンすれば、電力供給ができなくなります。
電力の供給系は、電力保安通信線という独立した通信設備を設けなければならない(電技第50条)ので、外部からのサイバー攻撃対策は、この閉じた系とIPとのゲートウェイをしっかりファイヤウォールして、電力会社の社内PCにウイルスが感染することのないようUSBメモリとかのセキュリティ対策を講じればまずは大丈夫かと思います。
怖いのはスマートグリッドの方で、電力の使用状況を送信するスマートメーターはIPを使って通信する仕組みのようです。
ここに悪さをされて、例えば使っていないのに電気をめっちゃ使っているというデータを、全てのスマートメーターから一斉に送信されたら、需給バランスはあっという間に崩れ停電するかもしれません。こういう潜在的な問題を、実は抱えています。
対策はもちろん検討されていて、@ITに参考になる記事があります。詳しくはリンク先をご参照ください。
③気象災害による電力インフラへの影響の懸念が増している
千葉県の沿岸で猛威を振るった2019年の台風15号(令和元年房総半島台風)、中部〜東日本の広い範囲に大きな爪痕を残した台風19号(令和元年東日本台風)では、大規模な停電が発生しました。
先の台風では送電線や配電線など、電気を送る設備が強風で破壊されたのが停電の原因でしたが、太陽光発電は洪水による浸水で容易に壊れるでしょうし、パネルも吹き飛ばされるかもしれません。
現状の法律による基準だけで大丈夫なのか、送電の方法をそもそも変えるべきなのか(架空→地下)、議論すべきポイントはたくさんあります。
リスクから目を背けない
記事では、これらの問題から目を背けるのではなく、あらゆるリスクと真摯に向き合い対策を講じた上で、必要な投資を行うことが、電力を商品として商売するものの責任であると論じています。
このサイトでも、電力供給がより安定して、僕たちがより安全に安心して電気を使うことができるよう、電力業界の抱える問題点を丁寧に解説していきたいと思っています。ご質問等ございましたら、どうぞお気軽にコメントやメッセージをいただければと思います。