最も印象に残っていること
・継続的な運動はストレスに対する耐性を上げ、気分が落ち込むリスクを下げる。継続的な運動はジムに通ったりランニングしたりといったガチな運動ではなく、通勤途中一駅早く下りて1駅区間歩いたり、エレベータではなく階段を使ったりといったものでも「運動」にカウントされる。ただし、継続的な運動であることが大事。単発の運動はむしろ体や脳にストレスを感じさせるきっかけとなる。
・幸せになるには、幸せについて考えないこと。メディアにあふれている「幸せ」は他人と比較することを前提としたものであり、その尺度を採用する限り、幸せにはならない。幸せとは自分が自分の外とのつながりを実感したときに感じるものであり、自分の生き方が自分自身の人生の意義と合致していると実感できたときに、副産物として感じるものであるらしい。また、脳はそもそも幸せに感じるようには設計されておらず、あくまで生き延びることを至上命題として設計されている(=幸せを感じることは生き延びる上で重要ではない、というのが今のところの人類の結論)
読もうと思ったきっかけ
友人から勧められたことがきっかけ。人がいかにしてストレスを感じるのかを知っておくことは無駄にはならないという強烈な勧め文句が刺さった。読了後、自分自身を客観的に、とくにストレスを感じた際に客観的に見ることができるようになったと思う。それによって一時的で感情的な言動を抑制することができるようになったと思う(思いたい)。ありがとうよしき。
折り目をつけた箇所
・「生き延びて遺伝子を残せるように、脳が感情を使ってその人を行動させる」(P36)
…感情は、自分自身が少しでも生き延びる確率を上げるためにとるべき行動を示してくれるものであるらしい。
・「幸福感というのは消えてしかるべきなのだ。」(P42)
…幸福感は人間に動機を与えないことから、生存確率を上げるという目的にそぐわず、従って本質的に長続きしない感情であるということ。
・「偏桃体は『火災報知機の原則』に則って動く。」(P51)
…周囲の危険を察知して次のアクション(=闘争か逃走)を準備させる(=心拍数を上げ血圧を上昇させる)のが偏桃体の役割であるが、動作は信頼性より確実性に重点が置かれている。危険かどうか疑わしい状況の場合はとりあえず偏桃体は動作し、結果パニック症状を発症させる。
・「不安に苛まれるのはおかしなことではない。」(P55)
…私たちの祖先はどこにでも危険を見出していたからこそ生き延びれたのであり、不安を感じるのはDNAに刻まれた生きる知恵であるということ。不安を感じることに不安を感じなくていい。
・「記憶はあなたの精神状態によって塗り替えられる」(P64)
…記憶は生存確率を上げるために次に起こすべきアクションを検討するためにあり、常に帰納的にアップデートされているということ。何らかのトラウマがあったとして、その記憶を安全な状態で呼び起こすことを繰り返すことで、その記憶は脅威ではなかったという記憶が醸成され、結果トラウマを克服できる可能性がある。
・「(不安を騙すためのテクニックとして)感じていることを言葉にして語る」(P77)
…言葉にして語ることで前頭葉が活発になるが、前頭葉の活動が活発になると偏桃体の活動は落ち着くことが分かっている。これを逆手に取り、不安を感じているとき(=偏桃体の活動が活発)に状況を言葉にして語ることで、偏桃体の活動を押さえ不安を除去することができるとのこと。
・「運動が記憶力や集中力、発想力といった思考能力に」影響を与える(P192)
…人類の歴史上、身体を動かしているときに思考能力を必要としていたシーンが多かったことが原因ではないかと考えられている。この特性を逆手に取り、集中力や思考力が必要な状況になる前に意図的に体を動かすことで、必要なそれらの能力を高めることができる。一方で、人類は生存確率を上げるために必要以上の運動をしないように設計されているらしく、なかなか運動に対するやる気が出ないのは人間の本来の特性らしい。