DENKIMAN

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大学では電気電子工学を学び、卒業後は鉄道会社に電気専門職として6年勤め、その後太陽光発電事業者に転職しましたが、今までに得た知見をまとめる為に本サイトを立ち上げました。しがない知見ではありますが、微小でも本サイトが業界の共有財産となればと思っています。

太陽光マネジメント
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サイト・セキュリティ
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テクニカル
・PRの計算方法おさらい
・モジュールの技術的な話
・インバータの技術的な話
・架台について
・モニタリングシステムについて
・ストリング監視は必要か
・通信異常発生時のトラブルシュート
電験二種取得計画
※非リンクは今後更新予定です。

【太陽光】インバータ(PCS)が通信不良になった時の対処方法

この記事で説明すること

太陽光発電所を運用していると、通信異常の問題によく遭遇しますが、このトラブルシュート方法については体系的にまとめた資料はあまりないのが現状と思います(この手の資料がインターネットに転がっていないことから、トラブルシュートには本当に苦労しました。。)

そこで、私の経験から、通信異常時のトラブルシュートと解決方法をまとめておきたいと思いますので、同様の事態に直面した方のご参考になれば幸いです。

なお、あくまで私の経験に基づく記述ですので、このトラブルシュートを実施したのに解決できない、または事態が悪化したとしても、すいませんが自己責任でお願いします。

と言っても、この資料は常にアップデートしたいと思っていますので、本記事によっても解決できない場合は、コメントをいただけますと幸いです。可能な限り、解決方法を一緒に考えたいと思います。

通信異常の原因として考えられること

通信異常の原因として考えれるのは、次の6つの事象です。

  1. 通信線が物理的に切断している
  2. 末端抵抗がONになっていない
  3. 機器本体の通信基盤が故障している
  4. データロガー本体の通信系機器が故障している
  5. 通信用SPDが故障している
  6. 電磁波的な外来ノイズ

各事象の根本原因は後ほど説明します。まずはトラブルシュートにより原因の断定をします。

トラブルシュート(原因の特定)

原因を断定するため、トラブルシュートを実施します。

①末端抵抗は挿入されているか?(インバータ通信基盤には、大抵ディップスイッチなどで末端抵抗をON-OFFできるようになっている)

・YES→②へ
・NO→末端抵抗をONにして復旧。トラブルシュート終わり

②通信異常の症状は、継続的に起こっているか?あるいは異常と復帰を繰り返しているか?

・継続的→④へ
・復帰と異常を繰り返している→③へ

③通信線用SPDの状態は正常か?(SPDチェッカーや端子間抵抗を確認することでSPDの健全性を確認する。SPDには故障状態を確認できるLEDがついている製品もある。)

・正常→外来ノイズの可能性がある。通信ケーブルのシースアースを取り直して復旧。トラブルシュート終わり
・故障→SPD本体の故障が原因。SPDを交換して復旧。トラブルシュート終わり

④通信異常は特定の機器のみに発生しているか。

・特定の機器のみが通信異常→機器本体の通信基盤が故障している。機器本体の通信基盤交換で復旧。トラブルシュート終わり
・2台以上の機器が通信異常→⑤へ

⑤通信結線図上、データロガーを中心に見たときに特定の機器より外側のデータがまとめて見れていない状態か?

・YES→通信不良となっている機器と接続されている通信線の断線状態を確認。断線の可能性が高い。通信線を補修または交換して復旧。トラブルシュート終わり
・NO→データロガーの通信系機器(RS485を採用していればMOXA等のインタフェース)が故障している可能性が高い。状態を確認し、交換して復旧。トラブルシュート終わり

故障の原因と復旧方法

通信線が物理的に切断している

通信ケーブルが物理的に破損することで、通信異常となるケースがあります。特徴的なのは、デイジーチェーンにより各機器が接続されている場合、通信結線図上データロガーを中心に、特定の機器以降の機器が通信不可になることです。

ケーブルの劣化により物理的損傷に至るというのはレアケースで、鼠害(ネズミがケーブルをカジカジする)や外的要因によりケーブル破損に至るケースがほとんどかと思います。

現地にてケーブル導通試験を実施し、ケーブルの断線を確認した上で、通信線を交換あるいは補修することにより復旧します。

末端抵抗がONになっていない

物理的な通信線の末端に末端抵抗という抵抗器を挿入しないと、通信線がアンテナのように動作してしまい、外部の電波を不必要にキャッチすることになります。それがノイズとなり、通信不良が発生することがあります。

これが原因である場合、通信異常は発生と自然復帰を繰り返すこともあるのでとても厄介です。

しかし、確認方法は至ってシンプル。末端抵抗はスイッチによりON-OFFできるよになっていることがほとんどですので、末端抵抗用スイッチの状態を確認し、OFFならONにして復旧します。スイッチがないタイプの場合、抵抗器をくっつけることで復旧します。

注意したいのは、末端抵抗をONにするのは、末端の機器のみです。全ての機器の末端抵抗をONにしてしまうと、今度は通信線の線路抵抗が著しく低下し、やはり通信できなくなってしまいます。

機器本体の通信基盤が故障している

雷等の外的要因、あるいは経年劣化により、機器の内部の通信基盤が故障することで、通信異常となるケースです。

特徴は、ある日を境にぱったり通信できなくなることと、他の機器は通信正常であることです。機器本体の通信基盤を交換することで復旧できます。

データロガー本体の通信系機器が故障している

データロガー本体の通信系機器(例えばRS485を採用していればMOXA)の故障が、通信異常の根本原因となるケースです。

特徴は、ある日を境にぱったり通信ができなくなること、かつ全ての機器が同時に通信不能になることです。

データロガー本体に付随する通信系機器のパイロットランプを確認するか、通信状態を解析し、データのやり取りが全くないようであれば、通信系機器の故障の可能性大です。通信系機器を交換して復旧します。

通信用SPDが故障している

落雷その他の影響で、通信用のSPD(避雷器)が故障しているケースです。

SPDは、雷によるサージ電圧を検出した場合、通信線の+と-をSPD内部で一時的に短絡させることで、サージ電圧を通信基盤内部に侵入させない仕組みとなっています。つまりSPDが故障すると、常に通信線の+と-が短絡状態になるため、通信できなくなるというわけです。

SPDの健全性確認として一番確実なのは、SPDチェッカを使って判定することですが、SPDが完全に故障している場合は端子間抵抗が0になりますので、テスターを使っても確認は可能です。

故障したSPDを交換することにより復旧します。

電磁波的な外来ノイズ

近くに変電設備等、電磁的ノイズが発生しやすい場所の付近である場合、電磁波がノイズとなっている可能性があります。正直一番厄介なやつです。

ケーブルのシースアースをしっかり取ることで復旧する可能性がある。

それでも復旧しない場合は、オシロスコープやFFTアナライザを使ってノイズの周波数成分を確認し、その周波数帯に対して一番効果のある線路インピーダンスを実現するための素子(コンデンサやインダクタ)を通信線に挿入することで復旧できるかもしれませんが、私はまだ実施実績がないです、すいません。

まとめ

通信異常にも様々な原因が考えられますが、異常は現場で起こるものですので、通信環境をイメージしながらトラブルシュートするのが一番肝要です。この記事でも解決できなかった場合は、コメントをいただけますと大変幸甚に存じます。

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