2020年6月30日の日経朝刊の一面に、NTTの再エネ参入に関する記事がありました。去年11月にも関連の話題が取り上げられており、その続報になります。
この記事を読んで初めに思ったのは、NTTの再エネ参入は、他の再エネ業界のプレイヤーにとって脅威になるのだろうかという疑問。
NTTはどの程度のプレイヤーになろうとしているのか
NTTが目指す再エネ発電容量は750万kWh。これがどの程度の規模なのか比較するために、今日(2020年7月1日)時点で東証一部に上場しているインフラファンドの発電容量を調べてみます。
1位…カナディアン・ソーラー・インフラ(119MW)
2位…タカラレーベン・インフラ(106MW)
3位…日本再生可能エネルギーインフラ(88.7MW)
4位…エネクス・インフラ(40.3MW)
5位…ジャパン・インフラ(30.4MW)
6位…いちごグリーンインフラ(29MW)
7位…東京インフラ・エネルギー(20.1MW)
なんとインフラファンド1位のカナディアンソーラーの6倍強の規模のプレイヤーになろうとしているのです。
NTTしかできない再エネ事業
しかも、他の再エネプレイヤーと一線を画すのは、自前の送電網を使うところにあります。
再エネプレイヤーにとって、出力制御は最も悩ましい問題の一つです。出力制御とは、電気が余剰となりそうな場合に、再エネ事業者の発電所を系統から解列する制御のことです。つまり発電した電気を売ることができません。自前の送電網を持つということは、これらの問題と無関係になることを意味します。
合わせて、NTTは蓄電池設備の導入を検討しています。これはFIPを睨んだ戦略です。
FIPはフィードインプレミアムの略で、現在導入されているFIT(フィードインタリフ)の次の売電形態です。FITは単位電力量あたりの購入単価が固定ですが、FIPは購入単価が変動になります。電気が余剰になりがちな夜間は単価が下がり、電力需要が増える日中は単価が上がる仕組みです。
つまり、単価が安い夜のうちに、安い料金で電気を購入して蓄電池に充電し、日中の単価が高いときに高い値段で売る。その差を収益とするビジネスモデルです。
NTTは他の再エネプレイヤーにとって脅威になるのか
他の再エネプレイヤーは、やるべきこと、つまり発電の効率化のためのマネジメントを着実に積み重ねてゆけば、この度のNTTの参入を過度に脅威に感じなくても大丈夫だと思っています。
ただし、出力制御のような再エネ業者にとってどうしようもない問題については、NTTが圧倒的に有利です。彼らは、本来であれば出力制御をくらってしまう状況にいたとしても、自前の送電網を使って顧客に電力を供給できるからです。
NTT以外の業者にとっては、安くても売電できたほうがいいので、結果NTTに電力を買い叩かれる恐れがあります。対策は、各自が蓄電設備を持つことですが、最終的には蓄電設備の導入コストとNTTへの売電による損失のどちらが安いかという問題に帰結しますし、当然それを睨んだ価格設定にするはずですので、この点はやはりNTTの方が有利かと、逆に言えばNTTは他の再エネプレイヤーにとって脅威になりうるところかと思います。