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再エネによる余剰電力を鉄道変電所で蓄電

再生可能エネルギーはCO2などの温室効果ガスを排出せず、資源も枯渇しないクリーンなエネルギーである。しかし、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを活用する再エネは、気象条件により発電量が左右され、発電量が需用量を上回ると、余った電力は有効に活用することができない。そこで、再生可能エネルギーによる余剰電力を充電させるための設備を鉄道変電所に導入し、余剰電力が発生しているときは充電、需用量が増加する時間帯は充電電力を活用することで、再エネを無駄なく利用することができる。発電側はそれまでできなかった余剰電力の売電を可能にし、鉄道側は電力を安価に仕入れることができることから、需要側と供給側がwin-winとなるアイデアだと思う。

 

再エネは地球温暖化防止の切り札

再生可能エネルギー(再エネ)とは、太陽光、太陽熱、水力、風力、バイオマス、地熱などのエネルギーのことである。これらのエネルギーは、利用してもエネルギーが枯渇することが無いので、再生可能エネルギーと呼ばれる。再エネがもてはやされているのは、COP(温室効果ガスの排出削減策を協議する国際会議)による世界的な温室効果ガス排出削減の動きがあるなかで、再エネは利用しても温室効果ガスが出ないことが大きい。加えて、現在の日本は、エネルギー供給の8割が化石燃料に依存する構造になっており、そのほとんどを輸入に頼っている。再エネが普及すれば、エネルギー自給率を改善できることも、政府が再エネを推進する大きな理由となっている。

再エネの欠点は発電量が安定しないこと

下図は2017年3月末時点の再生可能エネルギー発電設備の内訳をグラフにしたものである。

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再エネの内訳(2017.3月現在)

2017年3月末の時点において、稼働中の再エネ発電設備の4分の3は太陽光発電と風力発電が占めることがわかる。これらの発電方法は、日照時間や風速などの気象条件によって発電出力が左右されることが欠点である。電力需要より発電電力の方が大きいと、余った電気は余剰電力となり、活用することができない。この余剰電力を有効に活用できる仕組みが確立しないと、実は再エネを推進してもあまり意味がなくなってしまう。実際に、2018年10月に、九州電力の管内で太陽光発電による発電電力が需要電力を上回る事態が発生し、太陽光発電により発電した電力が活用されない事態も起こっている。

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余剰電力を鉄道で有効活用する

ここで鉄道会社の出番だ。鉄道会社は電気をコンスタントに使うので、余剰電力が発生している時間帯は余剰電力を安価で仕入れて、自前の蓄電設備に充電し、余剰電力が発生していない時間帯に蓄電しておいた電気を使えるようにする。蓄電設備にも様々な種類があるので簡単にまとめておく。

蓄電設備の種類

仕組み メリット デメリット
リチウムイオン電池

充放電時の化学反応(リチウムイオンの移動)を利用。

重量エネルギー密度=120Wh/kg

大容量の蓄電が可能。自己放電も少なく、充電・放電効率がいい。

過充電や過放電による電池の劣化が激しく、繊細な制御を必要とし、設備投資が高額になりがち。一度事故が起こると大規模な火災になりやすい。
ニッケル水素電池

充放電時の化学反応を利用。

重量エネルギー密度=60Wh/kg

リチウムイオン電池より発火の危険が少ない。 重量エネルギー密度がリチウムイオン電池より小さいので、単位蓄電容量あたりのコストが高くなりがち。
鉛蓄電池

充放電時の化学反応(硫酸イオンの移動)を利用。

重量エネルギー密度=35Wh/kg

短時間に大電流を放出しても電池の劣化が少ないため、扱いやすい。メモリー効果がない。 他の蓄電池と比べて大型で重い。希硫酸が入っているため、漏えいや破損時に危険。
電気二重層キャパシタ 電気二重層と呼ばれる物理現象を利用し、コンデンサを大容量化したもの。 化学電池と比べ、短時間で充電・放電ができる。充放電による劣化が少なく、過放電による劣化もない。 電池と比べると一般的に高価。エネルギー密度はリチウムイオン電池の10分の1程度。
超電導フライホイール

蓄電する電気エネルギーを使って、大型の円盤(フライホイール)を高速で回転させる。放電するときは高速回転しているフライホイールの運動エネルギーを使って発電機を回す。

重量エネルギー密度=25Wh/kg

リチウムイオン電池やニッケル水素電池のような化学電池を用いないので、電池の劣化が基本的にない。 蓄電したエネルギーを長時間保持することができない。しかし、鉄道は蓄電したエネルギーを比較的短時間の間に使用するため相性がいい。

発電側にもメリットはちゃんとある

再エネにより発電した電気が余剰電力となってしまった場合、現在の仕組みではこれを有効に活用できないので、発電側は電気を売ることが出来ない「出力制御」を余儀なくされてしまう。鉄道会社の蓄電設備によって余剰電力を吸収できるようになれば、出力制御による売電不可能の事態を避けることができ、発電側は売電の機会を逃すことがなくなる。

参考にした記事

日本経済新聞電子版(2018.12.17 2:00更新)「EV充電規格、商機と危機」

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO38866470T11C18A2TJC000/

記事の中でVPP(Virtual Power Plant: 仮装発電所)に関する紹介がある。これは、全国の電力網に接続されている家庭や事業所の充電設備を活用して、余剰電力が発生している間は各充電設備に充電、電力需要が増大する時間に放電させるものである。各々の充電設備が電力網の中でごく小さな発電所のように働くことから、仮想発電所と呼ばれる。記事の中で、資源エネルギー庁の話が紹介されており、「日本でVPPが普及すれば複数の原子力発電所が不要になる」ほどインパクトのある技術である。

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