読者様からリクエストをいただきましたので、インピーダンスボンドの仕組みについて解説します。たくみさん、コメントありがとうございます。
インピーダンスボンドの基本的な構造
インピーダンスボンドは、基本的に以下のような構成をしています。中にはコイルしか入っていません。
インピーダンスボンドには大目的があります。それはご存知の通り、直流の帰線電流(架線電流が電車に向かって流れるのに対して、帰線電流は変電所に帰る方向の電流のためこう呼ばれます)だけを流し、交流の軌道回路電流は流さないという役目です。
直流のみが流れる仕組みについて
まずは帰線電流である直流電流について考えてみます。
レールとインピーダンスボンドを電気回路に直してみると、次のようになります。
1つのコイルのみになりました。これが重要です。コイルは直流電流を流し、交流電流は遮断するという性質を持っています。この性質によって、直流である帰線電流はインピーダンスボンドを通過することができます。
電気的な仕組み
もし、なぜコイルが直流電流のみを流し、交流電流を自動的に遮断できるのか興味がある場合は、この下の解説も是非読んでみてください。ここからが電気の面白いところです。
電気回路で一番大事なのはオームの法則です。電気回路を流れる電流の大きさは、次の式で求められます。
超シンプルです。Iは電流、Vは電圧、Zはインピーダンスです。Rじゃないの?はい、RではなくZです。
なぜ抵抗Rと言わずインピーダンスZというのか、というと、インピーダンスZは抵抗Rと違って、電気回路にかかる電圧が交流の場合、その周波数によって値が変わるという面白い性質を持っています。電気回路が抵抗とコイルのみの場合、インピーダンスは、
Z=R+2πfLという式で表すことができます。そして、このインピーダンスZの値は、直流の場合と商用軌道回路周波数(50Hzまたは60Hz)で、次のように変化します。
直流の時はZ=Rだけだったのに、交流になるとZ=R+100πLとなります。この値をオームの法則に適用して回路を流れる電流直流と交流で比較してみると、
となり、交流の場合、直流に比べて電流Iが小さくなることがわかると思います。
これがインピーダンスボンドのカラクリです。直流のみを流す理由が分かりましたか?
ちなみに、インピーダンスは記号で書くとZなので、インピーダンスボンドのことをよく(カッコつけて)ZBと呼んだりします。