DENKIMAN

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大学では電気電子工学を学び、卒業後は鉄道会社に電気専門職として6年勤め、その後太陽光発電事業者に転職しましたが、今までに得た知見をまとめる為に本サイトを立ち上げました。しがない知見ではありますが、微小でも本サイトが業界の共有財産となればと思っています。

太陽光マネジメント
・予備品、備品管理
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サイト・セキュリティ
・かけるべき保険
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・発電所監視カメラ
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関係法令
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テクニカル
・PRの計算方法おさらい
・モジュールの技術的な話
・インバータの技術的な話
・架台について
・モニタリングシステムについて
・ストリング監視は必要か
・通信異常発生時のトラブルシュート
電験二種取得計画
※非リンクは今後更新予定です。

インピーダンスボンドが直流電流のみを流す理由

読者様からリクエストをいただきましたので、インピーダンスボンドの仕組みについて解説します。たくみさん、コメントありがとうございます。

インピーダンスボンドの基本的な構造

インピーダンスボンドは、基本的に以下のような構成をしています。中にはコイルしか入っていません。

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インピーダンスボンドの基本構成

インピーダンスボンドには大目的があります。それはご存知の通り、直流の帰線電流(架線電流が電車に向かって流れるのに対して、帰線電流は変電所に帰る方向の電流のためこう呼ばれます)だけを流し、交流の軌道回路電流は流さないという役目です。

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インピーダンスボンドは帰線電流のみを流す

直流のみが流れる仕組みについて

まずは帰線電流である直流電流について考えてみます。

レールとインピーダンスボンドを電気回路に直してみると、次のようになります。

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インピーダンスボンドを電気回路に変換

1つのコイルのみになりました。これが重要です。コイルは直流電流を流し、交流電流は遮断するという性質を持っています。この性質によって、直流である帰線電流はインピーダンスボンドを通過することができます。

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インピーダンスボンドは直流電流のみ流れる

電気的な仕組み

もし、なぜコイルが直流電流のみを流し、交流電流を自動的に遮断できるのか興味がある場合は、この下の解説も是非読んでみてください。ここからが電気の面白いところです。

電気回路で一番大事なのはオームの法則です。電気回路を流れる電流の大きさは、次の式で求められます。

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超シンプルです。Iは電流、Vは電圧、Zはインピーダンスです。Rじゃないの?はい、RではなくZです。

なぜ抵抗Rと言わずインピーダンスZというのか、というと、インピーダンスZは抵抗Rと違って、電気回路にかかる電圧が交流の場合、その周波数によって値が変わるという面白い性質を持っています。電気回路が抵抗とコイルのみの場合、インピーダンスは、

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Z=R+2πfLという式で表すことができます。そして、このインピーダンスZの値は、直流の場合と商用軌道回路周波数(50Hzまたは60Hz)で、次のように変化します。

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直流の時はZ=Rだけだったのに、交流になるとZ=R+100πLとなります。この値をオームの法則に適用して回路を流れる電流直流と交流で比較してみると、

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となり、交流の場合、直流に比べて電流Iが小さくなることがわかると思います。

これがインピーダンスボンドのカラクリです。直流のみを流す理由が分かりましたか?

 

ちなみに、インピーダンスは記号で書くとZなので、インピーダンスボンドのことをよく(カッコつけて)ZBと呼んだりします。

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