AIという単語を聞かない日はない今日、人間はますます人間らしく、クリエイティブに生きる必要があると思う。よりクリエイティブになるために、本を読んだり、芸術に触れたりする時間を大切にしている。今日、とても刺激的な出会いがあった。日経STUDYUMのセミナーで立命館アジア太平洋大学の出口治明先生のお話を聞けたのだ。教養とは知識と考察の積であり、知識を増やすためには自分の好きなことにとことん打ち込む「おたく」になること、考察力向上には「人・本・旅」が鍵となるという先生のお話は、今を生きるためのエッセンスで満ちており、とても興奮するものであった。
サービス業に欠かせないイノベーション
サービス業は現在の日本の主要産業であり、サービス業では常に新しいこと=イノベーションが求められている。かつて日本の国際競争力が強かった時代、日本の主要産業は製造業であった。正確に、大量に同じものを作ることが求められる工場では、クリエイティビティよりも素直さが求められ、そういう労働力が日本の製造業を支えていた。しかし時代は変わり、サービス業が主要産業となった現在、大事なことは新しい事・モノを生み出すこと、すなわちイノベーションとなった。このパラダイムシフトに乗り遅れた結果、日本の株式会社の時価総額は、アメリカや中国の企業にどんどん抜かされることになった。
全てのイノベーションは既存値どうしのくみあわせ
全てのイノベーションは、既存値どうしを組み合わせることでできている。この組み合わせが斬新であるほど、話題性のある面白いイノベーションになる。例えとして出口先生が例に挙げたのは、スープに人参とムール貝などを使用した野菜ラーメンだった。ラーメンも人参もムール貝も、有名でありきたりな食材であるが、これらを組み合わせることで、まだ誰も作ったことのない、話題性のある、面白いラーメンが完成する。ラーメンと聞いて連想できない食材であればあるほど、斬新なラーメンとなるのだ。
イノベーションに必要な「おたく」たち
イノベーションを起こすためには、1つのことにとことん取り組んだ人、つまり高学歴であり、「おたく」である人々による議論が欠かせない。特定の分野に関する豊富で深い知識を持った高学歴=おたくたちが結集して、凡人にはない視点に基づく議論を展開することで、斬新な既存値の組合せが発見され、イノベーションにつながるのだ。
教養=知識×考察
教養=知識×考察であると出口先生はおっしゃった。「おたく」はおたくゆえに幅広い知識を持ち合わせているわけだが、それだけではダメだということだ。幅広い知識を駆使して考えることこそ、クリエイティブであるために必要な力であり、これを教養という。また面白いことに、特定の、自分の好きなことについてとことん突き詰めることで、自然と他の分野の知識も身につくという。つまり、自分の好きなことを突き詰めることは、自分自身のあらゆる分野の知識を深めることにつながり、教養を深めることにつながるのだ。
考察を深めるための「人・本・旅」
考察力を磨くためには、人と出会うこと、本を読むこと、旅をすることが重要である。考察力は先天的に持っている力ではなく、訓練によって習得できるものだが、訓練にはお手本が必要だ。そこで、人と出会って話をしたり、偉大な人物の本を読んだり、旅によって全く異なる価値観を持つ人々と出会うことにより、考え方のお手本を見つけ、真似ることで考え方の訓練ができるという。このお話を聞いて、僕はハッとした。今まで、知識を溜め込むことは意識していたが、考え方の練習はほどんど意識したことがなかったからだ。
出口先生との出会いに感謝
出口先生の話はとても面白く、刺激的で、興奮した。新しい考え方を勉強することができたからだ。僕は今まで、ただ面白そうな本を手に取ったり、話題の芸術を鑑賞したりしていた。そうではなく、そこには考え方のヒントがあるのだ。この社会がより豊かに、そして人生をより楽しむために、出口先生が今日教えてくれたことを大切に、出会いに感謝しながら生きていければと思う。出口先生、今日は貴重なお話を大変ありがとうございました。また、セミナーを企画してくださった日経STUDYUMのスタッフの方々に、感謝申し上げます。