鉄道で未来を変えたい

台湾鉄路に感じる、かつてのJR西日本

 台湾で列車が脱線する事故があった。安全装置を停止させたことによる速度超過が直接的な原因だ。しかし問題なのは、安全装置を停止させたことよりも、安全装置を停止しても列車を高速で動かせるというシステムの仕様そのものにあると考える。そして、その仕様が採用された背景には、安全より優先される何かが存在する、かつてのJR西日本に見られたような、台湾鉄路の社風があるのではないか。事故を起こすことを物理的に不可能にする設計仕様を採用し、二度と同様の事故を起こさないという強い意識を持たなければ、鉄道を運営する資格はない。

 

脱線事故の概要

 この事故は2018年10月21日16:50(日本時間17:50)、台湾北東部の宜蘭県を走る台湾鉄路宜蘭(イーラン)線の新馬駅で発生した列車脱線事故である。新馬駅は緩やかなカーブを有する駅で、報道によると制限速度は時速80kmに設定されていた。このカーブに時速140kmで進入した特急列車は、このカーブを曲がりきれずに脱線したという。

 事故発生現場の約40km手前で、運転士はATPと呼ばれる安全装置を切っていたことが分かっている。日経電子版の報道によると、運転士は列車の走行中に列車の動力系統の異常を認めたためにATPを切ったと主張している。ATPを切らなければ、速度超過することはなく、速度超過による脱線もなかったと考えられる。

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事故の原因

 この事故は、ATPを切って走行したことにより、速度を大幅に超過した状態でカーブに進入、脱線したものである。

 ATPを切ったという事実よりも、ATPを切っても高速で走行できるという、システムの根本的な仕様に問題があるように僕は思う。今回の事故を見て、JR福知山線を思い出さなかっただろうか。福知山線の事故には、カーブでの速度超過を防止することができないというATSのシステム仕様上の問題点があった。当時のJR西日本には、安全よりもダイヤを優先すべしという雰囲気があった。台鉄はどうだろうか。今回の事故には、安全装置を止めることができるというシステム上の欠点がある。安全よりも優先される何かが、台鉄に存在するのではないか。

事故が起こり得ない設計仕様を

 事故がそもそも起こり得ないような仕組みを作ることが大切だ。僕が知っている限り、日本の鉄道は、ATSを切ると低速でしか走行できなくなるため、少なくともカーブで脱線するような事故は起こり得ない。人間が操作する限り、ヒューマンエラーは必ず起こる。それを防止するのがフールプルーフに基づく安全装置なのだ。仕様を見直し、事故が起こり得ない仕組みを作ることが、安全を守る上では欠かせないのである。

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