防災白書によると、災害が起きた時に自力あるいは家族に助けられて救出される「自助」に重点を置くべきと考える人が39%、隣人等によって救出される「共助」に重点を置くべきと考える人が24%に上っていることが明らかになっている。他方、消防や救急、自衛隊による救助などの「公助」に重点をおくべきと考える人は2002年の調査以来減少を続けている(防災白書pp.32)。2011年に発生した東日本大震災以降、市民の防災に対する意識が高まっていると指摘されている(1)。
注目したいのは、「防災に関して活用したい情報の入手方法」に関する内容だ。日経新聞でも指摘しているが、災害が発生した時に情報を得るために活用したい情報源は、世代を問わずテレビが一番高いという調査結果である(防災白書pp.34)。
震災が発生した時、インターネットは満足に使用できない可能性があるため、スマホで震災関連の情報を得られない可能性があるが、テレビなら視聴できる。そこで、震災発生時に鉄道を利用するお客さまに対して情報を提供するための手段として、もっとテレビを活用していいのではないかと思う。最近では行先表示器(列車の案内をするための電光掲示板)に、それまでのLEDに変わってLCDと呼ばれるいわゆる液晶ディスプレイを採用する鉄道事業者も増えてきた。災害等の非常時には、このLCDを活用してテレビ放送を表示させることで、お客さまに必要な情報をリアルタイムに提供することができないか。
また、駅はその地域の拠点となりうるので、地域のコミュニティ向けの掲示板を積極的に設置し、普段からこれらを活用できるように整備しておけば、災害が発生した時に大いに活用できるメディアになりうると思う。
かつて駅には伝言板と呼ばれる黒板が設置されていたと思う。携帯電話の普及等で伝言板の需要が減少したため撤去されていったそうだが、回帰の動きもあるようだ。それが、「シモキタ伝言板」と呼ばれる伝言板である。
「シモキタ伝言板」は「下北沢に住む人、働く人、遊びにくる人を繋げる」という目的で設置された。地域の人とのつながりや街自体の活性化を目的とした「シモキタ・コネクション」プロジェクトの一環で、下北沢にいる人なら誰でも自由に書き込むことができる。
地域のコミュニティを育むのに伝言板を活用するのは、一周回って新鮮な取り組みであると思う。これらの媒体を上手に活用して普段から地域コミュニティを醸成しておけば、災害時に円滑に「共助」することが可能になるのではないか。
災害時に、駅を利用されるお客さまに適切な情報を提供できる仕組みを整え、地域社会の繋がりを築ける仕組みを提供することで、災害に強い社会が生まれ、より暮らしやすい街が形成される。そのために鉄道事業ができることはまだたくさんあるはずであり、それらをスピード感を持って実施することが鉄道事業者の責任だと考える。
読みたい本
コミュニティを問いなおす―つながり・都市・日本社会の未来 (ちくま新書)
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