今日付の日経新聞朝刊に、石油メジャーが脱石油依存の構造転換を進めるという記事があった(1)。原油先物相場が上昇しているにもかかわらず、だ。エネルギー構造の観点でも、確実にパラダイムシフトが起こっている。持続可能な発展ができる社会の実現に向けて大切な変化であると思うし、こういうことこそ、子供たちに胸を張って伝えることができるニュースだ。
鉄道会社が消費する電力量はすさまじい。国土交通省が発表している平成27(2015)年度の鉄道統計年報(2)によれば、全国の鉄道会社が1年間に消費する電力量は175億kWhに達するそうだ。電気事業連合会のCO2排出実績・評価(3)によると、2014年度の1kWhあたりのCO2排出係数は0.554kg-CO2/kWhであるので、日本の電車を動かすために年間96億kgのCO2を排出している計算になる。鉄道会社は率先して環境問題に真摯に取り組み、脱石油・低炭素社会実現のためにリードしていかなければならない。太陽光発電事業や風力発電事業など、再生可能エネルギーを用いた電源開発に積極的に投資することも重要である。休遊している土地を活用し、太陽光発電事業を推進すれば、休遊地有効活用に伴う収益確保と環境保全に一役買うことができるのではないか。
脱石油・低炭素社会実現のために実施すべきことは、エネルギー構造の転換だけではない。この問題の本質は、現代の社会が大量エネルギー消費時代であることにある。私たち一人ひとりの意識の改革が必要だと思っている。たとえば、夜の室内の照明が明るすぎると思うのは僕だけだろうか。白くて明るい照明が豊かさの象徴となったのは、戦争のトラウマと高度経済成長期が原因とする説もある。本当に眩いほどに明るい照明が豊かさの象徴なのだろうか。大量にあらゆるものを消費することが豊かさの象徴なのであろうか。今の私たちが求めているのは、必要最小限の―しかしあたたかく、時間の流れをゆっくり感じられる明かりなのではないか。良いものを長く使い、必要なものをみんなで分け合おうとする価値観なのではないか。そういう価値観レベルのパラダイムシフトもまた、持続可能な社会の実現のためには必要不可欠だと思う。
鉄道会社には、そういう新しい価値観を提案していく義務がある。そういう豊かな社会を実現するためにも、鉄道会社は必要な存在なのだ。
参考文献
(1)日本経済新聞 2018年5月2日付朝刊(https://www.nikkei.com/article/DGKKZO30036920R00C18A5TJ3000/)
(2)国土交通省 鉄道統計年報[平成27年度](http://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000040.html)
(3)電気事業連合会 CO2排出実績・評価(https://www.fepc.or.jp/environment/warming/kyouka/index.html)