テレビでこの衝撃的な事故を知ったとき、僕はまだ小学生であった。沿線に建てられたマンションに張り付くように接触、大破した電車は、僕の知っている電車の形をしていなかった。乗客106名と運転士が死亡、562名が重軽傷を負った事故から、昨日で13年が経った。
あのニュースを見てしばらく、小学生であった僕は、しばらく電車に乗るのが怖かった。自分の乗っている電車ももしかしたら、あの電車のように脱線してしまうのではないかと。電車が安全でない乗り物かもしれないとお客さまに思われてしまったら、鉄道会社はもう存続する意味がない。お客さまを安全に目的地までご案内することが、私たちの使命であるからである。
昭和26年に鉄道輸送の規範として、運転の安全の確保に関する省令(http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=326M50000800055&openerCode=1)が定められた。昭和26年に桜木町駅構内で発生した列車火災事故である桜木町事故は、安全の確保よりも輸送を優先させる思想が原因で発生した事故であるが、この省令はそうした考え方を否定し、輸送よりも安全の確保を重要性を重視して制定されたものである。
過去に何度も、目を背けたくなるような凄惨な事故が起きているが、事故は繰り返される。安全の確保にこだわりを持って努め、その大前提の元にお客さまを目的地までご案内するために、過去の事故と何度も向き合うことが私たちのつとめであり、事故の被害者の方に対する一番の供養なのだ。